オフィスや学校など、複数のパソコンや機器が1つのネットワークに接続されている環境では、「部署ごとに通信を分けたい」「もっとセキュリティを高めたい」といったニーズが出てきます。
そんなときに役立つのが、「VLAN(ブイラン)」という便利なネットワーク技術です。
この記事では、ネットワーク初心者の方にもわかりやすく、VLANとは何か、なぜ使われるのかを丁寧に解説していきます!
VLANとは?ネットワークを仮想的に分ける技術
VLANとは「Virtual LAN(仮想LAN)」の略で、1つの物理的なネットワーク機器の中に、仮想的に複数のネットワークをつくる仕組みです。
もともとLAN(ローカルエリアネットワーク)は、限られた範囲内のパソコンや機器が自由に通信できるネットワークのこと。
ですが、現実のオフィスでは「営業部と経理部で通信を分けたい」「特定の端末同士だけ通信させたい」といったニーズがよくあります。
VLANを使うと、同じスイッチやLANケーブルを使っていても、まるで“見えない壁”を作るようにネットワークを分離できます。
イメージとしては、1つの建物に複数の会議室があり、それぞれ壁で仕切られているようなものです。
同じ建物内でも部屋ごとに会話が分かれている、そんな感じですね。
なぜVLANが必要?セキュリティと効率をアップ
VLANを導入する主なメリットは、セキュリティの向上とネットワークの効率化です。
たとえば経理部の給与データに、他部署のメンバーがアクセスできてしまうと大問題ですよね。
VLANでネットワークを部署ごとに分けることで、こうした不要なアクセスを防げます。
また、すべての通信が1つのネットワークに集中していると、まるでラッシュ時の道路のように混雑してしまいます。
VLANで通信経路を分散させることで、データの流れがスムーズになり、ネットワーク全体のパフォーマンスも向上します。
例えるなら、全員が同じ会議室で同時に話すと混乱しますが、部屋を分ければ静かに集中できますよね。
VLANは、そんな「会議室の仕切り」のような役割を果たしてくれるのです。
図でわかるVLANの仕組み
VLANでは、「VLANタグ(IEEE 802.1Qタグ)」と呼ばれる情報が通信データに付与されます。
これにより、「この通信はVLAN10(総務部)用だ」とスイッチが判別できるようになります。
ただし、通常の端末が接続されるAccessポートではタグは付かず(untagged)、トランクポートでのみタグ付き(tagged)通信が行われます。
スイッチは、ポートの設定やタグ情報を元に、どのVLANに属する通信かを判断し、同じVLAN内だけにフレームを転送します。
これはまるで、社内便で荷物を配るとき、「○○部宛」というラベルを見て届け先を判断するようなものです。
📌 VLAN構成イメージ:

このように、同じ物理スイッチに接続されていても、VLANで論理的にネットワークを分けることができます。
CiscoスイッチでのVLAN設定方法(基本編)
VLANを使うには、スイッチでの設定が必要です。
ここでは、CLI(コマンド操作)を使った、Ciscoスイッチでの基本的な設定手順を紹介します。
🔹 VLANの作成
Switch> enable
Switch# configure terminal
Switch(config)# vlan 10
Switch(config-vlan)# name SOUMU
Switch(config-vlan)# exit
Switch(config)# vlan 20
Switch(config-vlan)# name DEV
Switch(config-vlan)# exit
🔹 AccessポートへのVLAN割り当て
Switch(config)# interface fastEthernet 0/1
Switch(config-if)# switchport mode access
Switch(config-if)# switchport access vlan 10
Switch(config)# interface fastEthernet 0/2
Switch(config-if)# switchport mode access
Switch(config-if)# switchport access vlan 10
Switch(config)# interface fastEthernet 0/3
Switch(config-if)# switchport mode access
Switch(config-if)# switchport access vlan 20
🔹 VLANの状態確認
Switch# show vlan brief
このコマンドで、各ポートがどのVLANに属しているかを確認できます。
💡補足:トランクポートの設定
複数のVLANを1本のケーブルでまとめて通すには、トランクモードの設定が必要です。
トランクは、複数のVLANをタグ付きで通す“幹線道路”のような存在です。
Switch(config)# interface fastEthernet 0/24
Switch(config-if)# switchport mode trunk
VLAN導入のメリットと注意点
VLANを導入すると、以下のような効果が得られます。
- セキュリティ向上:部署ごとに通信を完全に分離できる
- トラブル対応が簡単に:問題のある通信をVLAN単位で特定できる
ただし、VLAN間で通信したい場合は「Inter-VLAN Routing」という仕組みが必要になります。
これはL3スイッチやルーターで異なるVLANを中継する技術です。
たとえるなら、「部屋は分けられていても、隣の部屋と話すにはドアが必要」といったイメージですね。
まとめ|VLANでネットワークをもっと使いやすく
VLANは、ネットワークを“仮想的に部屋分け”することで、セキュリティと効率を高められる便利な技術です。
実際の現場でも広く活用されており、ネットワーク設計や運用に欠かせない存在となっています。
最初は難しく感じるかもしれませんが、「部署ごとに会議室を分けるようなもの」と考えると理解しやすくなります。
ネットワークの基本を身につける第一歩として、ぜひVLANの考え方をマスターしていきましょう!